心境や考え方の変化は案外と突然やってくるものです。今まで「これじゃなきゃ」と思っていたことでも、ふとしたことで、その対局にあるものを「いいじゃん」と思うようになったりすることがあります。
最近、そんな心境の変化が突然やってきました。
それはクルマ。
今まで見向きもしなかったハイブリッド車。数週間前にたまたまPHV(プラグインハイブリッド)のことを調べていたら、モーター走行(EV)の航続距離も伸び電気自動車としての実用性が上がっていることに気づきました。PHVはバッテリーがなくなったらHV(ハイブリッド)で走行できるので電欠の心配もないし、ガソリンエンジンを使って自家発電でき家庭用電源供給装置にもなる、クルマ以上の「なにか未来的なもの」に思えてしまったのです。
ちなみにPHV(プラグインハイブリッド)とは、モーターとガソリンエンジン両方を積んだクルマです。普通のHV(ハイブリッド)はガソリンエンジンがメインでモーター駆動がサブなのに対し、PHV(プラグインハイブリッド)はモーターがメインでガソリンエンジン駆動がサブ。と思えばわかりやすいかもしれません。電気が切れるまではEV(電気自動車)、切れたらガソリン車みたいな感じです。
PHVはトヨタPrius PHV、三菱アウトランダー PHEV、Audi A3 e-tronなどがありますが、先日(2017年2月15日)タイミングよく2代目のPrius PHV(プラグインハイブリッド)が発売開始されました。このクルマ、量産車初のソーラーパネルを装着でき、僕のPHV熱を高める要因になりました。
2代目Prius PHVが魅力的に映ったポイント
□ HV(ハイブリッド)なのでEV(電気自動車)特有の電欠の心配がない
□ 自家発電した電気でクルマを動かせることができる かも?!
□ ソーラーパネルもつけられる自家発電する未来のクルマ!
オフグリッドライフが与えた嗜好性の変化
僕はどちらかといえばクルマ好きのカテゴリーに入ると思います。今では絶滅危惧種のマニュアル車に乗っていますし、エクステリア、インテリアには僕なりの基準があります。運転することも好きで1日500kmくらい走ることはそんなに苦ではありません。
ちなみに東京から500kmだと京都くらいですね。
セルモーターを回しエンジンが始動する瞬間や、回転数を身体で感じながらシフトアップ、シフトダウンを繰り返す動作、クリッピングポイントを意識しながらコーナーに進入していく時など、機械と無言のコミュニケーションをしながら一体感が生まれる瞬間に楽しさを感じてしまうタイプの人間です。
僕のクルマへの価値基準は、人が操作する範囲が多いことと内燃機関の鼓動を感じられることが大きなウェイトを占めているのです。
しかし、世の中の流れは化石燃料の消費を抑える方向に動いています。EUは2020年までに走行距離1km当たりのCO2排出量を、いまの130グラム以下から95グラム以下にする規制を発表しています。これを実現するにはエネルギー効率をさらに高めて行くか、ハイブリッドもしくは代替エネルギーを使っていくしかありません。
僕のいままでの嗜好からすると「エネルギー効率を高める」クルマを選択することになりますが、今週に入ってから突然、次は「EV(電気自動車)」か「PHV(プラグンインハイブリッド)」だな。と思ってしまったのです。
自給したエネルギーで移動してみたいという妄想
CO2排出量や環境を意識すると、水素を利用する「FCV(燃料電池車)」という選択もありますが、燃料電池用の水素を製造するには、化石燃料(灯油・LPG・天然ガス)を原料として取り出すのがメインストリームになるでしょう。製鉄所で使う石炭(コークス)からの発生する副生ガスを精製する方法、電気を使って水を電気分解する方法などがあるようですが、安定供給するには化石燃料(主には天然ガス)に依存することになると思います。
だからといってEVやPHVが必ずしもクリーンとは言い切れません。日本の電力は原子力発電が停止してから80%以上を化石燃料に依存しています。(LNG 46%、石炭 31%、石油 10%)
https://sustainablejapan.jp/2016/05/18/electricity-proportion/13961
結局のところ、どの動力源を使ったとしても化石燃料に依存することに変わりないのです。僕が目指したいのはCO2排出量うんぬんではなく、自給できない化石燃料に依存するのではなく、自給したエネルギーで移動すること。
ここ数年、房総フィールドで100Wのソーラーパネル1枚とバッテリー2個で週末を過ごしています。そこで分かったことは電力の自給は可能だということ。より発電効率のよい太陽光パネル、より大きな蓄電能力を備えたバッテリー、より消費電力の低い電気製品など、テクノロジーがさらに進化するとともに価格が低下し、ライフスタイルがミニマル化(エネルギー消費量が低下)していくと、電力自給が当たり前の世の中になっていくと思っています。
いままでアウトソースしていたことを自分でまかなえるようになると外部に依存しなくなるのは自然な流れであり、本当のエネルギーシフトは電力の自給から始まるものだと思います。
ここ最近の心境の変化、価値観の変化は、このような世の中の動きと、オフグリッドで過ごす実体験から生じてきたようにおもいます。
EV vs PHVで実用的なのはやっぱりPHV
自給した電力で走行できるクルマのとなると、化石燃料を主たる動力源とする「エネルギー効率を高めた」クルマでも化石燃料をベースとする「HV(ハイブリッド)」でも「FCV(燃料電池車)」でもなく、「EV(電気自動車)」か「PHV(プラグンインハイブリッド)」になっていくのです。
本筋からいえば「EV(電気自動車)」を選択することになりますが、2017年2月時点のラインナップをみるとどれもあと一歩足りない印象を受けてしまいます。
EVの課題は充電時間と充電用の配線工事(200V)が必要なこと、そして電欠
当たり前ですが、大容量のバッテリーを積めば航続距離は伸びます。しかし容量が大きくなれば充電時間も長くなります。現在販売されているEVの多くはPHVに比べ大容量のバッテリーを積んでおり、充電時間を短くするために専用の200Vコンセントで充電することを前提に作られているものが多いです。(PHV含め一般的な家庭にある100Vプラグ非対応の車種が多い)
このハードルが非常に高い。家電のようにもっと気軽に今の生活に入り込むようにしないと心理障壁となってしまいます。
さらに、いざ長距離を走ろうと思った時に電欠を心配したり、充電スポットを転々とできたとしても1回あたりの充電に時間がかかるのがネック。充電スポットの数は増えてきましたが、急速充電器 CHAdeMOを使っても、そこそこの距離を走るには最低20〜30分くらいかかるようです。
PHVであれば電気がなくなってもガソリンエンジンで走行できますし、ガソリンエンジンを回して発電し蓄電することもできます。
そう考えると動力源を2つ持つ「ハイブリッド」であることのメリットは想像以上に大きいように思えてきます。
自家発電した電気で東京⇔房総フィールドを行き来することは現実的?
東京の自宅と房総フィールドの距離は片道約100km
電力での航続距離を国産EVの代表的存在 日産LeafとPrius PHVで比較してみると、Leafが280km、Prius PHVが68.2km。
バッテリー容量がLeaf 30kWh、Prius PHV 8.8kWhと約3.5倍の差があります。
Leafであれば往復+αの余裕はあります。Prius PHVだと片道68.2kmをEVで走り、残りの130kmほどをガソリンで走ることになってしまいます。
ただ、ガソリン走行時の燃費が37.2km/Lなので3.5リッターあれば往復できます。ちなみにいま僕が乗っているクルマだと往復約20リッター+α消費するので1/5以下になります。
もし房総フィールドにPrius PHV用のソーラー充電システムを構築したら1.7リッターあれば往復できることになります。
EV/PHV用のソーラー発電システムをシミュレーション
EV(Leaf)の場合
バッテリー48個+ソーラーパネル24枚 123万円〜
自家発電でLeafを充電しようとすると給電に200V 15Aの電源が必要になります。200V 15Aだと3,000W出力できるインバーターが必要になります。さらにフル充電に必要な時間は11時間。となると33,000W分を蓄電するバッテリーが必要になります。
現在房総フィールドで使用しているディープサイクルバッテリーACDelco M31MFは12V 115Ahなので1,380Wの蓄電能力があることになります(あくまでも理論上は、ですけど)
インバーターの変換ロスを無視しても33,000W分を蓄電するには最低24個のバッテリーが必要になるということです。しかし鉛バッテリーの特性上、蓄電量の半分を下回ると再充電できなくなる可能性が高くなるので、最低でも48個必要になります。バッテリー2個に100Wソーラーパネル1枚で充電するとした場合24枚のパネルが必要。
試算してみると、200V/3,000Wのインバーター 25万円、バッテリー62万円(1個 1万3000円 x 48個)、ソーラーパネル36万円(1枚 1万5000円 x 24枚)で123万円ほどになります。さらに24枚分のパネルを設置する土地面積も考えるとちょっと非現実的。
PHV(Prius)の場合
バッテリー12個+ソーラーパネル6枚 29万円〜
一方、Prius PHVの充電に必要な電力試算してみると8,400W必要になります。さらにPrius PHVには200Vに加え家庭用コンセントで使われている100Vでも充電できます。(100V x 6A x 14時間 = 8,400W)
ACDelco M31MFだと、1,380W x 6個 = 8,280W x 2セット(鉛バッテリーの特性上倍の容量が必要)で12個。100V/600Wのインバーター 4万円前後、バッテリー12個 16万円、ソーラーパネル 6枚 9万円で、トータル29万円。
*諸々のインバーターの変換ロスやソーラーパネルの実出力値を考慮していないので、実際はもう少し増強したほうがよいでしょう。
*バッテリー2個(1,380W x 2 = 2,750W)に対し100Wソーラーパネル1枚なのは週末1回の充電を前提にした経験則になります。日照している時間=フル発電できる時間が1日4時間だとすると1日400W。400W x 7日で2,800Wで1週間で満充電になる計算です。
*配線等の費用は別途かかります(笑)
このざっくり試算だと今のクルマのガソリン代 2年分±α程度で回収できちゃいますね。
自家発電装置としてのPHVの魅力
さらに、Prius PHVにはルーフに180Wソーラーパネルを設置できるオプションがあります。ざっくり計算すると晴れの日が続けば10日〜2週間ほどで満充電になる感じでしょうか(180W x 4h(1日の日照時間) = 720W(1日の発電量) x 11日 = 8,640W)
オプション価格28万円なので費用対効果でいったら薄い気もしますが、量産車で初のソーラーパネル搭載は非常に気になります。週末のみドライブする人で日中陽に当たる駐車場に置いておくのであれば侮れないシステムになります。
さらに、Prius PHVはハイブリッドなのでガソリンエンジンも付いています。ソーラー発電と火力発電(ガソリンエンジン)の2種類を搭載した動く発電所とも捉えられます。
こちらもオプションになりますが、外部給電用コンセント(7万5600円)をつければガソリン満タン状態で2日間100V/1500Wの給電ができます。オフグリッドでの非常用発電装置としても魅力的。
今まで乗り継いできたクルマでもシガーソケットに100VインバーターやUSBチャージャーを刺してモバイルデバイスを充電してきましたが、さすがに家電製品を動かすには出力不足。
Prius PHVの外部給電システムは1500Wも使えるので、うまくやりくりすれば最低限の生活をまかなえてしまいます。
Prius PHVはクルマ以上の「なにか未来的なもの」
Prius PHVは、移動の自由を与えてくれる「クルマとしての要素」だけではなく、充電して動く「家電的なモノ」でありつつ、発電と蓄電機能を備えた「電力供給装置」にもなるクルマ以上の「なにか未来的なもの」に見えてきます(笑)
クルマという枠組みだけでは捉えきれない可能性と、ちょっと先の生活をイメージさせてくれる面白いコンセプトを持ったマシーン。
久しぶりに想像力を掻き立てられるデバイスに出会った気がします。
オプションをチョイスしながら価格シミュレーションしてみると370万なり。さて・・・