木場にある東京都現代美術館で開催されている「ジャン・プルーヴェ展 椅子から建築まで」(2022年7月16日〜10月16日)に行ってきました
ここに来るのは2015年に開催されたブラジルの建築家「オスカー・ニーマイヤー展」以来ですね
ジャン・プルーヴェは1930年代から亡くなる80年代にかけて活躍したフランスのフランス人デザイナー
ロベール・マレ=ステヴァンス、シャルロット・ペリアン、ル・コルヴィジエ、ピエール・ジャンヌレらと共に1929年に設立されたUAM(Union des Artistes Moderns)で建築、家具、テキスタイルからグラフィック、写真、絵画にいたるまで新しいライフスタイルやデザインを追求してきました
後にアメリカで花開くミッド・センチュリー・モダンの源流といっても良いかも知れません
ただのデザイナーと大きく異なるのは、造形のみならず自社工房で構造を追求してきたことにあると思います
代表作 スタンダードチェアやコンパスデスクの脚部デザインは、その他の家具、建築の構造などに用いられていますが、その取り付け方法には様々なバリエーションがあり構造上の試行錯誤が繰り返されてきたのではないかと推測されます
同一パターンを繰り返す発想は建築にも展開され、自社工房で生産された規格サイズのパーツで組み立てるプレハブ構造の建物を見ると、現代の工法にも大きく影響を与えたことを感じ取れます
素材のバリエーションが今ほど多くなかったこともあるでしょうが、木材と金属を組み合わせた質感とバランスの美しさ、ディテールまで意識が回った造形を見ると現代のインテリアデザインや建築が貧相に見えてきてしまいますね
ジャン・プルーヴェの家具
今回の展示は家具と建築にテーマが絞られています
まずはジャン・プルーヴェが手がけた家具からスタート
初っ端に展示されていたのがコンパステーブル
比較的初期の作品と思われ、おそらくアルミ板が天板に打ち付けられています
木製の棚にアルミ製の引き戸のキャビネット、両袖のデスクとチェア
こんなオフィスで仕事できたら最高ですね!
そういえばこの型に似ているデスク、以前働いていたショップで売ってたんだよなぁ... 買っておけばよかった
30年くらい前で100万くらいしたけど!
壁に固定されたデスクとフォトゥイユ ディレクションチェア
照明のトグルスイッチがまたお洒落じゃないですか!
家具、建築以外で展示されていたのがこの自転車
このフレームにもプルーヴェっぽいデザイン要素が感じられます
家具のスケッチなども数多く展示されており見入ってしまいます
ジャン・プルーヴェといえばこのチェアとテーブルのコンビネーション
現在はドイツ Vitra社でスタンダードチェア、EMテーブルとして復刻されています
次の展示室には椅子がずらり!
壮観の一言!
スタンダードチェアの原型と思われる椅子
分解パーツの展示もあり、アルミ製のパイプの中にネジ棒を入れて固定されているようです
木製のフレームにアルミパイプを嵌め込むスリットが刻まれており手の込んだ構造になっていますね
フォトゥイユ ディレクションチェア
オリジナルを目にする機会はなかなかありません
こちらも希少なアントニーチェアのオリジナル
プルーヴェの代表作の一つです
そして木製のスツール
余談ですが、房総フィールドでDIYしたスツールはこれをイメージして作りました!
ジャン・プルーヴェの建築
続いて建築の展示に移ります
ジャン・プルーヴェ建築の特徴といえばモジュール化されたパーツで構成された建物
建築セクションではモジュールの実物や模型が数多く展示されております
まずはアフリカで使われた開閉式の壁面
まるで飛行機のフラップのようです
フラップのような曲線もさることながら背面の処理も美しい
美はディテールに宿るってことですね!
このようにパーツが分解された状態での展示が多く構造がよくわかります
これはEMテーブルのパーツ
こんなにシンプルな構造だったんですね
アルミモジュールの壁面と扉で構成されたファサード
一見固く見えるアルミの質感もデザインを施すだけでこれだけ豊かな表情になります
企画展の最後は「F 8x8 BCC組立式住宅」
モジュールで構成されたというとシンプルで味気ないものをイメージしてしまいますが、ディテールはとても表情豊かです
構造パーツにフォーカスしてみると斜めにカットされていたり
装飾的な手間を加えることで有機的なエッセンスが組み込まれています
窓のヒンジも有機的で手が込んでおり、工業的なコンパス脚と絶妙なバランス
組み立て式住宅のパーツも分解展示されています
ジャン・プルーヴェの小屋とこれからの「家」の在り方
小屋ラーの端くれである僕が一番ピクんときたのがこれ!
構造体の枠組みが外側にある4メートル四方のこの小屋は、1939年の夏にアトリエ・ジャン・プルーヴェが娯楽施設向けに開発した組立式住宅を、戦時下におかれた同年冬から翌年初めにかけて、軍需市場に向けて応用したものである。「田舎の小屋」と呼ばれたこの小屋は、ふたりの施工者が3時間で組み立てることができ、戦争初期には陸軍によって使用された。折曲げ金属板でできた外側の構造は拡張や縮小が可能で、すばやく効率的に組み立てることができた。この4X4組立式住宅は数百戸しか製造されず、現存するのは、ナンシーのフェレンバル社工場入り口で守衛小屋として使用されていた1棟だけである。
もしこんなモジュールが現代でも販売されていたら房総フィールドに建ててみたくなりますね!
これを4つ組み合わせて真ん中を廊下にして、開口部を少なくして断熱処理して...
なんて妄想が広がります!
ディテールを詰めまくってイメージを形にしていく家づくりをしてみたいなぁと思う一方、1軒の家に住み続けるのなんてどんなに長くても60年程度
数千万のお金を注ぎ込み35年かけて返済していくより、安価で簡単に組み立てられて移動もできてしまう家にも惹かれてしまいます
賃貸、持ち家の2択から、シェアハウス、多拠点生活、サブスク、ホテル住まいと居住スタイルが流動化していくなか、改めて「家」というものをどのように捉えるか考えさせられますね
ちょっと話はそれましたが、今回のジャン・プルーヴェ展、なかなかお目にかけることができないオリジナルの家具を見れたり、プルーヴェの本質的な設計思想に触れられることができとても有意義でした
10月までやっているので、気が向いたらもう一度みてみようかなと思います
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またまた余談ですが、東京都現代美術館で学芸員の方が座る椅子はジオ・ポンティデザインの646チェアでした
ジオ・ポンティの代表作 699スーパーレジェーラの原型になった椅子です
なんて余計なところに目が向いてしまうのは家具好きの性なので致し方ありません(笑)
どうせなら会期中はプルーヴェの椅子にすれば良いのにね!