1950年代前後にアメリカで花ひらいたミッドセンチュリーモダンというデザインムーブメント
椅子やテーブルなど家具の世界では、それまで木製パーツをひとつひとつ加工し接合し組み立てていたマニファクチュア的作り方から、プライウッド合板やFRPなど新素材を利用し大量生産されるようになりました
プライウッド合板やFRPは、プレスや鋳型で成形するためデザインの自由度が上がります
この頃の家具の特徴を一言で表すとしたら、一体成形したオーガニック(有機的)でフューチャリスティック(未来的)なフォルムです
流行り廃りの影響も受けず60年経った今でも販売され続けられているものもあり、デザインの耐久性には驚かされます
この時代に活躍した代表的デザイナーは、チャールズ・イームズ、ジョージ・ネルソン、ハリー・ベルトイヤー、イサム・ノグチ、エーロ・サーリネンなどなど
おそらくデザイナーの名前は知らなくても作品を見ればどこかで見たことのあるものばかりだと思います
そんなミッドセンチュリー期のデザイナー達に多くのインスピレーションを与えた人物の1人がエリエル・サーリネン
フィンランドで活躍したあと、1920年代に渡米した建築家、デザイナー、ランドスケープデザイナー、教師というマルチクリエイター
チューリップチェアをデザインしたエーロ・サーリネンの父と言ったほうがわかりやすいかもしれませんね
サーリネンとフィンランドの美しい建築展@汐留 パナソニック美術館
大々的にスポットライトがあたるタイプの建築家・デザイナーではありませんが、2021年7月3日から9月20日まで、汐留にあるパナソニック美術館で建築展が開かれているので、遅ればせながら見てきました
エリエル・サーリネンが建築家として歩み始めた1900年頃はアーツ・アンド・クラフツ、アール・ヌーヴォーといった美術運動が主流でエリエルの建築にも大きく影響を与えています
パリ万博フィンランド・パビリオン(1900年)Photo from wikipedia
植物などをモチーフにした有機的な装飾性に加えフィンランドの民族的意匠がミックスされ、後に続くアール・デコ、モダニズムとは一見対極のようにも思えます
タリンの木材・家具工場の従業員厚生施設(1905年)Photo from wikipedia
しかし、時代が進むにつれシンボリックな意匠が少なくなり、自然界にある曲線を概念化し単純化して、アーツ・アンド・クラフツやアール・ヌーヴォーのエッセンスをデザインの中に溶け込ませるような方向にシフトしている印象を受けました
ミッドセンチュリーモダンに受け継がれるエリエルのエッセンス
TWA Flight Center(1962年)Photo from wikipedia
建築展を見終わり、改めてエリエルの息子 エーロ・サーリネンの代表作 JFK空港 第5ターミナル「TWAフライトセンター」の有機的ラインを見ると、間違いなく父 エリエル・サーリネンの美的センスを継承していることを感じました
エーロ・サーリネンのチューリップチェア、チャールズ・イームズのプライウッドチェアやシェルチェア、ハリー・ベルトイヤーのダイアモンドチェアのオーガニックなラインも同様です
ドイツ バウハウス系の質実剛健な直系モダニズムと違い、アメリカで花開いたカラフルで有機的なミッドセンチュリーモダンの源流はエリエル・サーリネンにあることを体感できる展覧会でした
ミッドセンチュリー期の家具や建築が好きの方は、そのルーツを知る良い機会になると思います
おすすめです!
2000年代に受け継がれるエリエルのエッセンス
ということで、息子エーロがデザインしたチューリップチェアに座ってこの記事を書いております!
ちなみにこのサイドチェア、20年くらい前に2万円くらいで購入したフルカバーバージョン
この夏、ロフトのリノベーションに合わせて、ウレタンフォームとファブリックの張り替えをしたものです
こうやって、エリエルのデザインエッセンスは脈々と受け継がれていくのです!
そういえばTWAターミナルもホテルに生まれ変わったようですね
TWA HOTEL(2019年)Photo from wikipedia
めちゃくちゃかっこいい!
早く自由に動けるようにならないかなぁ
イームズオフィス80周年ポップアップイベント「Eames Office : 80 years of design」@ 伊勢丹 新宿