フィンランド人のプロダクトデザイナー "タピオ・ヴィルカラ"(1915-1985)
おそらく彼の名前を知っている人はほとんどいないと思いますが、僕が彼の作品に初めて触れたのは20代の頃
当時働いていたモダンデザインを取り扱う家具屋でした
キノコのような、お花のカラーのようなガラス製品
おそらくittala(イッタラ)のヴィンテージ Kantarelli(カンタレリ)のバリエーションだったと思いますが、その有機的なフォルムに魅了されたのを鮮明に覚えています
2025年4月5日から6月15日まで東京駅の中にある東京ステーションギャラリーにてタピオ・ヴィルカラの日本初回顧展が開催されています
皇居を背にして左側、東京駅北口のドーム、美しい!
その北口ドームの中にあるのが東京ステーションギャラリー
タピオ・ヴィルカラは1915年にフィンランド南部の港町ハンコの生まれ
父は彫刻家で墓地設計士、母は木彫やテキスタイルを制作されていたそうです
1946年、ガラスメーカーittala(イッタラ)のデザインコンペで優勝してからデザイナーとしてのポジションを確立していきます
僕のヴィルカラのイメージはガラス製品しかありませんでしたが、ヴィルカラ自ら開発した積層合板「リズミック・プライウッド」で制作されたオブジェや、カトラリーなどの金属製品などが展示され、創作活動の幅がとても広いことを知ることができました
そして、すべての作品に共通する要素は、有機的な美しさ
展示物の間の壁に書かれたヴィルカラの言葉に、ものづくりへの姿勢、その美しさを引き出すエッセンスを感じとることができます
素材は可能性を持っている。そして自らの法則に従おうとする。
芸術家の使命は、それが目的地にたどり着けるように導くことである。 1961年
すべての素材には不文律がある。
決して乱暴に振る舞ってはならない。デザイナーの意図は、素材と調和するものではなくてはならない。 1979年
モデルの制作は私の仕事の根幹である。
いくつも作って比較することで、アイディアがより鮮明になり、間違いも発見しやすくなる 1979年
手を動かすものづくりは、セラピーのような効果がある。
指先の「目」を通して、形態が絶え間なく動き、変容していくさまを感じ取ることができる 1979年
この世のすべてのデザイナーがこの発想をしてくれたら、世界はもっと美しくなるでしょうけどね!
この展示で知ったのですが、フィンランディア・ウォッカのボトルデザインもヴィルカラの作品でした
他にもフィンエアーの機内食用食器、フィンランド紙幣のコンペの優勝作品など、活動の幅の広さに驚かされました
1960年代初頭にラップランド イナリの大自然の中に居を構え創作活動をされていたようです
ラップランドは、私を充電する場所となった。
都会のエゴイズムと野心の匂いにとらわれ、「このままでは溺れる」と感じた時につかむ命綱。
集中するため、そして生き延びるための手段。 1981年
その地で溶ける氷を見て着想を得たガラス製品「ウルティマ・ツーレ」は美しい氷柱と溶け出す雫そのもの
ヴィルカラのインスピレーションの源泉、そしてアウトプットするもの
そのすべてが自然の中からやってきて、人はそのルールに従うだけであることをプロダクトを通じて感じさせてくれる展示でした
東京ステーションギャラリー2階から見下ろした東京駅北口
残念ながら展示の撮影がNGだったので雰囲気をお届けできないのが残念ですが、とても良い回顧展でした
プロダクトデザインがお好きな方であれば間違いなく楽しめます!
ゴールデンウィークにお時間あればぜひ!
東京ステーションギャラリー
タピオ・ヴィルカラ 世界の果て
2025年4月5日(土) - 6月15日(日)
https://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/202504_tapio.html