コンセプト

土地との出逢い ~土地を買うということ~



半年前には想像もしていなかったことですが、2010年12月に土地を購入してしまいました。場所は千葉県 房総。

仲の良い人に「房総に土地を買ったんだ」と言うと、全く関心がなく「ふ~ん」で終わる人と、「なんで房総なの?」と聞き返してくる人がいます。聞き返してくる人達は概ね2種類に分けられ、「おっ、なんか面白そう」と好意的にとってくるタイプと、「なんで東京から外れたところに土地なんか買うんだ?仕事や通勤はどうするんだ?相変わらず浮世離れしている」と現実的な判断を下し半ば呆れているタイプに分かれるようです。
(ちなみに、僕は都内に30年以上暮らし、都内で仕事をしています)

関心が無い人には説明の必要もないけれど、現実的な話をしてくる人達への説明が意外と厄介。なんせ、そもそも土地を買う予定なんて無く、ある意味、衝動買いで、僕にとっては大きなおもちゃを手に入れた気分だし。

とは言え、我が人生で最大の買い物なので(大きさも価格も!)、購入に至るまでにはそれなりのプロセスがあったわけです。そもそも、関心が無ければ土地なんて見に行かないですし。まして房総になんて。

 

房総に土地を買うまでの道のり

 

■きっかけは逗子・葉山から始まった
過去を振り返ってみると、5年くらい前にも海の近くでスローな暮らしをしてみたいと想い、逗子・葉山付近の家を探していたことがありました。しかし、残念ながら逗子・葉山付近の不動産価格は高く、ある程度の面積がある戸建てを買うには資金的に厳しく、せいぜい20~30坪くらいの一般的な住宅を購入するのが限度。自分が漠然とイメージしていた海辺の生活を実現するには、相当な貯蓄がないとできないことが分かり、線香花火が散って行くように、その想いが消えていきました。要は理想と価格のギャップに負けたということです。

 

■移動距離への抵抗が薄れ地方の魅力を感じる
逗子・葉山移住への熱が醒めたあとは、移住への関心も薄れ、生活は日常に戻っていきました。その代わり、趣味のひとつであるドライブに多くの時間を費やす日々が始まります。今思い返すと、このことも房総の土地購入に至る大きな要因だったように思います。
2007年に、それまで乗っていた故障続きのイタリア車から、国産のオープン2シーターに乗り換えました。このクルマにしたのは、学生時代、オートバイにテントを積んでツーリングしていたときの開放感をクルマで再現してみたかったからでした。これが予想以上に面白く、週末や休暇を使って3年間で沖縄を除く46都道府県を走破。走行距離は6万km越える勢いで日本全国を駆け回ってきました。

このライフスタイルを続けたことで移動に対する抵抗感と距離感が麻痺してしまい、都内から100km圏内であれば、電車で新宿、渋谷に出るのと同じくらいの感覚になっていきました。

それと同時に、地方や関東近郊の土地固有の空気感を肌で感じとることで、自然が身近にある地方の方が心身ともに満足度が高いということに気が付きます。季節ごとに違う表情を見せる風景、源泉掛け流しの温泉、海産物や野菜など採れたてでフレッシュな食材。これにまさる贅沢ってある?!といった感じで。

 

■東京との関係性
そんな生活を続ける中で、東京への興味がどんどん薄れて行くのは必至だったのかもしれません。現在の住居がある東京、そして仕事がある東京。ここ数年の家計を見てみると、稼いだお金で衣食住をまかない、余った分で日本を旅することに費やしてきました。時間も同様、大半の時間を仕事に使い、家では寝るだけ。残りの時間を東京脱出に使う。そう、仕事以外で東京にいる意味があまり無いことに気が付いてしまったのです。

もうひとつ、東京への魅力が薄れた要因として、どこに行っても同じようなモノやコトで溢れていて、街が均質化していったことにあるように思います。確かにメッシュを細かく区切って行くと、東京にもまだまだオリジナリティ溢れる魅力的な場所はあると思います。でも、いわゆる都心部はどこに行っても同じ店、同じ商品が並べられ、都市が放つ魅力が薄れているように思うのです。
おそらく、インターネットというメディアの影響も大きく、以前は都市でなければ手に入らなかったモノや情報がどこにいても比較的容易に入手できる世の中になってきました。となると、東京に暮らす意味はますます薄れていきます。

 

■自分の本性?!
直近の感覚の変化が今回の行動に繋がっているのは確かですが、いざ縁もゆかりも無いエリアに土地を買うとなるとそれなりの決断を迫られます。いくら地価が安いといっても高価な買い物に違いはありません。一目惚れで買って良いものなのか、本当にココで良いのか、なんでココなのか、と自問自答していくと、必然的に過去に体験したことや、遠い記憶が甦ってきたりします。その過程で気が付いたことは、動かしがたい根本的な部分で自分の行動や感覚を固定しているものがあるということ。
僕の場合、小さい頃から土地への憧憬があったようで、小学生の身分で「土地が欲しい」と言っていた記憶があります。何故かは分かりませんが、小屋を造ったり、木登りをしたり、どろ遊びをしたり、自分の好き勝手に出来る領土が欲しかったのかもしれません。そう考えると、その気持ちは今もまったく変わっていないようにも思えます。

それと、これも小学生の時ですが、親父が買ってきた本の影響は大きいように思います。その本はジョン・シーモア著「完全版 自給自足の本」。土地の活用方法、大地のひらき方、家畜の飼い方、作物の育て方、自然エネルギーの活用など自給自足のノウハウがイラストと共に解説された一冊。当時の僕はこの本を飽くこと無く読みふけっていました。

今回の土地購入を決断するにあたり、再びこの本を引っぱり出して読み返してみると、結局のところ、本質的な部分で求めていたことはこういうことなんだと再認識させられました。

 

■ディザスター対策
自給自足的な側面でいうと、もし食料やエネルギーの価格が暴騰し生活が脅かされたら。なんてことをここ最近考えるようになってきました。食料自給率40%(カロリーベース)、エネルギー資源にいたってはほとんどを輸入にたよらざろう得ない現実。今後、世界の人口が増えて、エネルギー消費が拡大し、賃金の安い労働力が溢れてくるでしょう。一方、日本では高齢化が進み人口が減り、労働力が減少すると共に、生産するモノに付加価値を生み出しにくくなっている現状を見ると、経済的プレゼンスが落ちて行く可能性は高い。輸入に頼っている食料・エネルギー供給はリスクとなる。それ以外にも、いずれくると言われている東海地震を考えると、東京以外のエリアに居住地を確保し、ある程度、自給できる状態にしておくコトも必要だと思ったのです。

 

■なぜ房総か?
逗子・葉山の家探しを諦め、5年程経った昨年、再び漠然とながら東京から少し離れたところにセカンドスペースを持ちたいという想いが湧いてきました。候補地は東京からちょうど100km程のところ。エリアでいうと、箱根、秩父、房総あたりになります。これらのエリアはクルマだと2時間程度で行ける距離。おそらく当面は東京で仕事をすることになるため、東京との距離感も意識しないといけません。これ以上離れてしまうと完全に別荘化してしまいそうなので、移動距離を考えるとこれくらいがちょうど良い、というのが僕の直感。

もうひとつの要素として、東京からこれくらい離れると不動産価格は驚く程安くなります。これなら逗子・葉山エリアで挫折した価格の壁に勝てそう!というのが背中を押してくれました。

最初は、一定の自給ができる土地面積があれば良いと思い、秩父付近で土地を探していたのですが、できれば海にも近いところが良いなぁというのが本音でした。そして出会うのがこの土地だったのです。

 

そしてこの土地に出逢い、購入へ

と言ったような要因が複合的に絡み合って、2010年9月にインターネットで何気なく房総の不動産サイトを覗いていたら、フラットな大地に樹々が空高く伸びた土地の写真を発見。ちょっと日本離れしたその風景に惹かれ、ドライブがてら現地に足を運んだところ、その場の雰囲気や空気感が想像以上で一目惚れしてしまったのです。価格もなんとか折り合いがつきそう。帰宅後、周辺情報(相場、交通、スーパーなどの店舗などなど)を調べたところ、十分生活出来そうな場所でした。
決め手となったのは、価格だけでなく、海が近くにあり自然溢れる住環境、ある程度の利便性などのバランスがとれていたこと、一定の自給ができる土地面積があったこと。そしてなにより、土地そのものに魅力があったのが最大の決め手でした。正直、房総エリアにはあまり興味は無かったのですが、この周辺にはサーフカルチャーがありオーガニックなライフスタイルを送る人々が多く移住してきています。出会った地元の方々が暖かく、よそ者を受け入れてくれる雰囲気があったことも大きかったと思います。
さっそく翌週、不動産会社に連絡をとり、3週間後に買付証明を提出。(その翌日、他の人がその土地を買いたいという人が現れたそうで、ホントぎりぎりでした)

土地を初めて見てから登記移転まで約2ヶ月。

このエリアが気に入り、移住や二拠点居住を考えている人が、何年も土地探しをしていたりする話を聞くと、僕はかなりラッキーだったのかもしれません。普通であれば、気に入った土地があっても周辺の他の土地を見たりするものですが、僕はここしか見ませんでした。一発命中。過去の自分、今の自分、未来の自分、色々なものが繋がって、ある意味運命に導かれているような気分でここまできたような気がします。

さぁ、このまっさらな土地でこれからどんな事が起こるのだろう?
まだ漠然としていますが、何かが始まるような気がしてならない。楽しみだ!

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