スリランカの建築家 ジェフリー・バワの別荘 Lunuganga(ルヌガンガ)へ
ルヌガンガは、首都コロンボから80kmほど南、インド洋に面した街「ベントタ」に隣接したデダワ湖のほとりにあります(コロンボからクルマで1.5〜2時間ほど)
ルヌガンガとは、スリランカの公用語であるシンハラ語で「塩の川」を意味するそうで、庭園が接するデダワ湖が海へと通じる川 ベントタ・ガンガに繋がっている汽水湖であることから名付けられたようです
元々はオランダ人のシナモン園、後にイギリス人のゴム農園であった南北500m、東西300m(約4500坪)の土地を、当時、弁護士をしていたジェフリー・バワが1949年に購入。そこにあったバンガローを週末を過ごす場所として改修を始めたことが建築家への道を歩むきっかけとなりました
1953年イギリスで建築を学んだジェフリー・バワは、コロンボにある自宅兼事務所「Number 11」と、ここ「ルヌガンガ」を往復する二拠点生活を送り、この地で様々な意匠や建物の配置、眺望の実験を亡くなるまで繰り返し、彼が手がけた住宅、ホテル、寺院などの設計にフィードバックされています
今回、ジェフリー・バワが設計した、シーギリアロックを望むヘリタンス カンダラマとゴール市街の北部にあるジェットウィング ライトハウスにも宿泊しましたが、その雛形がここルヌガンガにあることを随所で感じることができました
では早速ルヌガンガのフォトトリップへ!
メインストリートから細くガタガタの道を進むとアイアンのエントランスゲートが見えてきます
ここからがルヌガンガです
メインバンガロー THE HOUSE

その奥に佇むのがルヌガンガのメインバンガロー「The House」
どこまでがオリジナルかは不明ですが、この建物はもともとこの地にあったもので、ここを改装することからルヌガンガの歴史が始まりました

左側の蔦が絡まった壁に彫像が配置されています
スリランカはポルトガル、オランダ、イギリスに統治されてきた歴史があり、西洋を感じさせるコロニアル様式の建物が多く残っています
熱帯の風土にヨーロッパの様式を溶け込ませるているのは、そういった影響もあるのでしょう

メインバンガローのエントランス
白黒のチェックのタイル張りに燻んだ黄色の壁面
その奥にダイニングスペースがあり、奥の扉の向こうの庭園まで抜けています
この視覚効果がジェフリー・バワの特徴のひとつ

エントランスから入った奥のダイニングスペース(ソファ奥の右がエントランス、左が庭園)
派手なエントランスとは対照的に、白い壁面にダークブランの床面、格子模様の天井の空間
クラシカルでシックで落ち着いた家具や調度品が配されています
鏡の奥にキッチンがあり、現在は宿泊者の食事がここで作られています

ダイニングスペースの反対側を見ると、ガラス張りのバルコニー空間
錆び錆びになったlouis poulsenのPH アーティチョークランプが柔らかい光を注いでいます

庭園からのメインバンガロー
扉が開かれ、内と外の境界が曖昧な開放的な空間
宿泊客はジェフリー・バワが朝食をとったと言われるここで食事をすることになります

メインバンガロー前面の庭園にプルメリアの大樹がシンボルツリーのように配されています
屋外で育てられて、こんなに大きくなるなんて羨ましい!

デダワ湖を望む丘の縁にルネサンス調の彫像が置かれ、コモ湖畔のような雰囲気(いったことないけど!)

庭園の縁にはレンガで直線と曲線を合わせたジグザグの境界が置かれ、丘の下には水田とデダワ湖の眺望が広がります

丘を降りて湖方向から田んぼと水蓮の庭を望む「ボードウォーク」
実際にここでお米を作っているのかは不明ですが、綺麗に整ったグリッドの水田は美しいものです

水田の奥にはボートに乗り込める小さなポート「ウォーターガーデン」があります
左右の柱の上に大きな坪とヒョウのような猫科の彫像
シナモンヒル Cinnamon Hill

ルヌガンガの象徴的な風景とも言えるのがシナモンヒルと呼ばれる丘の上にポツリと置かれている壺
奥に見えるのが先ほどのメインバンガロー
2003年に亡くなったジェフリー・バワの遺骨は、遺言通りここに散骨されたそうです

メインバンガローとシナモンヒルの間には小道が横切っていますが、それを隠すように造成し小さな回廊で結んでいます

回廊を抜けるとジェフリー・バワと親交が深かった彫刻家で画家のラキ・セナナヤケ氏が描いた壁画があります

先ほどの壺を見ながらシナモンヒルの丘を越えるとデダワ湖の眺望が広がります
丘側からは視界に入らないよう、丘の斜面のし下に小さなプールを配し、さらに下に水田が広がる設計

プールはジェフリー・バワらしくインフィニティ仕様!
インフィニティプールを誰が最初に作ったのかは諸説ありますが、ここではバワが産み出したということにしておきましょう!
シナモンヒル CH1 Cinnamon Hill CH1
現在はルヌガンガではゲストハウスや使用人が使っていた建物に宿泊することもできます
THE GEOFFREY BAWA SUITE、MAIN HOUSE STUDIO、GALLERY STUDIO、GATE HOUSE、GLASS HOUE、CINNAMON HILL 1、CINNAMON HILL 2、NO.5 MASTER SUITE、NO.5 GUEST SUITE、NO.5 ENA'S BED ROOM、NO5. ENTIRE VILLAの11室がTeardrop Hotelsによって運営されています
スリランカに行こう!と決めたタイミングで、空きのあったシナモンヒル CH1の予約が取れたので、1泊することにしました

シナモンヒル CH1はシナモンヒルの丘を超えた右手、先ほどのプールから見た左手奥にあります
ここは金属工職人ベリック・バースの作業場跡を取り壊して1992年に作られたそうです

エントランスの前には南国らしくジャックフルーツが実っていました

シナモンヒルハウスのエントランス
木々に覆われ、ガーデンツアーもここまでは来ないので、人気を感じることもなく鳥の囀りと猿の鳴き声、葉の擦れ合う音だけの世界

扉を開けるとロビー空間と左手にキッチン

室内の鍵は手作りだそうです

シナモンヒル CH1の扉を開けると左右の窓の中央に籐編みの椅子

右手にはベッド

左手にデスクとその奥に洗面があります

シナモンヒル CH1のバスルームはシャワーのみ
コンクリートの壁はメインエントランスと同じトーンの褪せたイエローとホワイトの配色
緑が自然に溶け込む素敵な配色
天井が抜けた半屋外の空間は熱帯地域ならではです(天井部にネットが貼られているので虫は入ってきませんでした)
ザ・グラスルーム The Glass Room

メインエントランスの右側にはガレージがあり、その上にガラス張りの回廊が室内空間となったザ・グラスハウスがあります

ここにも宿泊できますが左右ガラス張りの空間は落ち着かなさそうです!

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初めてルヌガンガの写真を見て以来、憧れ続けた場所
この地のことを知ってから10年以上経つと思いますが、「いつか行ってみたい」と思っていたところにようやく辿り着くくとができました
仕事ではないですが、住空間をつくるのが好きな僕にとってはとても刺激になる場所
実際にその場の赴き、五感を使いまくって体感してみないと分からないことがたくさんあるものです
ルヌガンガは15〜30分ほどで1周できるくらいの大きさですが、庭園全体の視覚効果、自然の中に溶け込む建物、シンプルでありながら絶妙なバランスで配された家具や調度を見ていると1日あっても足りません
またスリランカに来たらもう一度泊まってじっくり堪能したいと思います!
Geoffrey Bawa: The Complete Works

