トロピカルモダニズム建築家として知られるスリランカのジェフリー・バワ
彼の代表作のひとつ、ヘリタンス・カンダラマへ
ヘリタンス・カンダラマは、スリランカの首都 コロンボから北東へ約170km、車で4〜5時間ほどのところに位置しています
カンダラマ貯水池を隔て、西にダンブッラ石窟寺院、北にシーギリアロックがありスリランカ観光スポットの拠点にもなる場所
1991年にスリランカの大手コングロマリット エイトケン・スペンス社がシーギリアロック周辺にホテル建設を計画し、建築家 ジェフリー・バワを同行させたのがこのホテルの始まり
当初はエイトケン・スペンス社が保有していたシーギリアロックの麓の土地に建設する予定でしたが、ジェフリー・バワが南西部にあるカンダラマ貯水池の方が適していると施主を説得し、この場所での建設がスタートすることになりました

ホテルは背面の岩山と前面の貯水池に沿って配され、センターにあるレセプションを中心に、右にダンブッラウィング、左にシーギリアウイングが伸びる設計になっています
設計開始後、ダンブッラ寺院の僧侶や環境保護活動家などの反対運動で、当初の計画とは異なるようですが、熱帯の密林に溶け込む空間はとても神秘的でドラマチック
では熱帯ジャングルに佇むヘリタンス・カンダラマのフォトツアーへ!
レセプション・ロビー

メインストリートを曲がり舗装されていない細い道へ
こんなところにホテルがあるのか?
と思わせる道のりですが、10分ほど走ると石畳のアプローチになり、小高い丘を登るとヘリタンス・カンダラマのレセプションに到着します

レセプションから剥き出しの岩に沿った湾曲した細長い回廊

回廊を抜けると樹々の間に湖を見晴らすロビーとオープンエアのカフェエリアが広がります
薄暗く細長い回廊から、一気に開放的な空間へ繋がる演出
初っ端からジェフリー・バワのマジックにかけられてしまう瞬間です!

ロビーの前にはカンダラマ貯水池に溶け込むインフィニティプール
完敗です(笑)

プールサイドからロビー方向をみると、この建物がジャングルの中にあることを認識させられます

ジェフリー・バワの週末別荘 ルヌガンガでは庭園では壺が空間演出に使われていますが、ヘリタンス・カンダラマでも同様に鉢や壺が所々に配されています

ロビーからレストランへと伸びる階段
階段の上にはジェフリー・バワの友人でもあった彫刻家・画家のラキ・セナナヤケ作のフクロウのオブジェ

フクロウのオブジェの下にはシーギリアロックを望むスペース
まるで額縁で切り取ったかのような風景
ジェフリー・バワもここからの眺めを楽しんでいたそうです

シーギリアウィングの客室が並ぶ廊下
右手はホテル背面側
ジャングルの樹々とその奥に岩山が聳えています
シーギリアウィング 客室
ホテルを予約した際、「眺望が良くて自然を感じさせてくれるお部屋にしてください」とリクエストしておいたところ、シーギリアウィングの5階(ロビーと同階)の503号室にしてくれました

ロビーや廊下はコンクリートとアイアンで構成されていますが、室内はウッドベースの落ち着いた空間

カラフルでありながらシックな配色のタペストリーが貼られたベッドボード
どことなくスリランカ国旗の色彩に似ています

居室と横並びになったバスルーム
リクエスト通り、カンダラマ貯水池の奥にシーギリアロックを望む眺望

バルコニーから外観を望むと建物に絡みついた植物が垂れ下がっています
コンクリートでありながら周囲のジャングルと一体となる設計はお見事

早朝になると猿たちが黒い柱をつたってバルコニーの前までやってくるので外に食べ物を置いておくと取られてしまいます!
扉の鍵を開けておくと中に入ってくることもあるそうなので泊まる時は注意です!
階下の貯水池と建物の間に象も現れるそうですが、残念ながら見ることはできませんでした

早朝、バルコニーからの眺め
スリランカは熱帯地域特有の湿度たっぷりな気候で、雨と晴れたりを繰り返すので1日の中で風景が変わっていきます
ヘリタンス・カンダラマ建物散策

建物は岩山に沿って建てられており、ところどころ岩が建物の中に食い込んでいます

要所要所に外界を切り取る空間が設置されています

建物背面の洞窟に設置されたテーブルエリア
ここで食事を摂ることも可能なようです
人もほとんど来ないので1週間くらい滞在していろんなところでゆったりとした時間を過ごすのも悪くなさそうです

ダンブッラウィングの先端部分
こちらも見事な借景

ヘリタンス・カンダラマには3つプールがあり、こちらはロビー上のプール
ジグザグに設置され、床面の一部は岩肌をそのまま活用しています

6階にあるプールから、ロビー階のインフィニティプールを覗くと遠くにシーギリアロック

岩肌をつたってロビー階に降りると先ほどのインフィニティプールに行くことができます

最上階にはイベントスペース的なものがありガラス張りの空間になっています

こちらはその下のレストラン
このガラス張りの空間のベースは、ジェフリー・バワの週末住宅 ルヌガンガの「グラスルーム」からインスピレーションを得ているようです

朝食メニューは豊富で、スリランカの国民食でもあるホッパーもあります
ホッパーは米粉をイーストで発酵させたあと、卵、ココナッツミルク、砂糖、塩を混ぜたタネを専用の鍋で焼いたクレープのような軽食です
スリランカ滞在中、毎日のようにホッパーを食べ、すっかりハマってしまったので、ホッパー専用の鍋を購入してきてしまいました(笑)
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ジェフリー・バワが建築や景観の実験を繰り返してきた週末住宅「ルヌガンガ」
そこにあるモチーフが至る所に散りばめられた、バワの集大成のような空間が広がるヘリタンス・カンダラマ
今回は2泊しましたが、もうちょっと長くステイしてこの空間を堪能しても良かったかな?!と思わせてくれるホテルでした
スリランカの建築家ジェフリー・バワの別荘 ルヌガンガへ Lunuganga Estate by Geoffrey Bawa
Geoffrey Bawa: The Complete Works

